聖アウグスティヌスは、カトリック教会で最も重要な哲学者、神学者の一人で、西暦313年にローマのコンスタンチヌス大帝によって、カトリックが公認された後の世界で、マニ教をはじめとした異端との戦いや三位一体といったカトリックの教義に重要な役割を果たした聖人であるが、実は、青年の頃は、性欲等の物欲や、マニ教との異端の教えに染まり、カトリックの熱心な信者であった母モニカを困らせていた。はっきり言って罪人であったが、32歳の時に、神からの呼び掛けに答え一大回心を遂げた。その経緯は、著書「告白」に詳しい。どんな経緯で回心を遂げたのであろうか。
32歳の時に、母モニカが、16年連れ添った素性のよろしくない女性を別れさせ良縁を探してきたが、彼女はまだ婚期に達しておらず、2年待たねばならないという。性欲に我慢できない彼は、またしても情婦を探し、性欲を満たしていた。良心の呵責に悩まされた彼は、たまたまアフリカから帰った友人から、荒野に住んで修道生活を送る修道士の話しを聞いて、「無学な者が奮起して天をうばったのに、わたし共は学問がありながら、どこをのたうち回っているのか。血肉の中にではないか」(「聖人たちの生涯」池田敏雄著、中央出版社より引用)。
興奮した彼は、涙を拭おうともせずに外に走り出た。すると、隣家の庭で遊ぶ子供たちが「取って読め、取って読め」と繰り返し歌っていた。これを聞いたアウグスティヌスは、これは「聖書を開いて読め!」との神の命令と悟り、すぐに聖書を探して開いたところ、ローマ人への手紙13章12節が目に止まった。
「夜は更けて日は近づいた、だから、闇に行われる業(わざ)を捨てて、光の甲(よろい)をつけよう。昼のように謹んで(つつしんで)行動しよう。酒盛り、淫乱、好色、争い、妬み(ねたみ)を行わず、主イエス・キリストを着よ。よこしまな肉の欲を満たすために心を傾けることはするな」(「旧約・新約聖書」ドンボス社)。
これを読んで、聖アウグスティヌスは回心を遂げたのである。
横浜教区信徒 森川海守(ホームページ:https://www.morikawa12.com)
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