筆者は、経済的な理由と、1級小型船舶操縦士免許を取得していたため、東京都建設局から委託された(公財)東京都環境公社が行っている河川清掃業務(さらに民間に委託)に従事する機会を得たことがある。河川・海岸のプラスチック散乱の動態を調査したいと思っていたので、民間会社からのオファーに飛び込み、1年半に渡って、河川に浮遊するごみをたも網で拾い上げる業務に従事した。詳細は、月刊廃棄物2017年2月号をご覧いただきたい。 河川清掃の基地は、潮見にある。船としては、浮遊ごみを、回転するコンベアーで船の中央部のごみ置き場(二の間)に運び込むコンベアー船が8隻、コンベアーのない手作業船が2隻、小型ボートが2隻、ごみ運搬船が1隻ある。 作業者は右舷と左舷の二手から、長さ約3m弱の柄のついた、外径32㎝のたも網でごみを拾い上げ、コンベアー上か二の間に入れる。網目は直径約3㎝でタバコのフィルターは拾えない。ごみは中央防波堤ごみ揚陸場でパッカー車に積み換えられ、重量計測後、野外のごみ選別場で手作業で可燃と不燃に選別、前者は焼却、後者は不燃ごみ処理センターに運ばれている。 この仕事で、筆者が特に危惧したのは、発泡スチロールである。ポリスチレンの粒に蒸気で加熱して膨らませ、膨らませた粒と粒が熱でくっついたものなので、使い続けると、ボロボロと落ちやすい。筆者は、生活クラブに加入し、1週間に1回、マンションの4階に配達してもらっているが、配達後、床を見ると、発泡スチロールの粒がバラバラと落ちている。これらが野外に出たらどうなるかと心配している。特に、内外から年間約70万人が訪れる浜離宮を囲む水辺には、隅田川を通して隣接する築地市場から風で飛ばされてきたと思われる発泡スチロールのトロ箱が大量に流れ混んできているのが注目される。恐らく、市場の外に何気なしに置いたトロ箱が風に飛ばされてきたと思われるが、安いために、故意に川に投げ込んだ輩(やから)がいるかもしれない。しかし、ひとたび、隅田川に流れこめば、拾われない限り、日本とアメリカを循環する太平洋ごみベルトの海流に乗って、ハワイ等の島々を汚染するだろうし、ウミガメや海鳥等の誤飲・誤食を招くだろう。こうしてみると、粉々になりやすい、生分解できない発泡スチロールは、すぐにでもその製造・販売・使用を禁止すべきであると同意していただけるだろう。軽くて、扱いやすい、しかも安くて、冷房効果の高い発泡スチロールに代わる材質のものは中々ないが、安いという条件を外せば、容易に見つかる。かつてのプラスチックも、最初に市場に登場したときは高かったのだ。政府の補助金を得て、大量に生産されて今日の栄華を築いた。生分解の材質のものは、発泡スチロールの製造・販売・使用が禁止されれば、容易に見つかるし、大量生産されれば、かなり安くなると筆者は思う(上記文章は、豊洲市場に移転する前の状況をつづっている。)。
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