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執筆者の写真森川海守

個包装という名の過剰包装


 最近、2cmほどの小さなビスケットの類(たぐい)までもが、ビスケットの一つずつにプラスチック包装されているお菓子をもらって、唖然としてしまった。ちょっとやり過ぎているぞという思いが深い。そろそろメーカーに文句を言おうではないか。日本は少しやり過ぎているぞと。

 読者の皆さんも、やってみてはどうか。個包装で一杯になっているプラスチックの袋から、個包装を取り除いてみたらどうなるか。なんと個包装を外してみたら、お菓子は、袋のわずか半分以下を占めているだけなのであるのを知る。過剰包装と言わずしてなんと言おう。せめて小分け包装、つまり2個以上の中身をまとめて包装している包装にしませんかと、筆者は言いたい。

 

 筆者は、5年ほど前、河川清掃に従事したことがある。船の上から3m近い棒の先端に外径32cmの網で、流れてくるごみを拾うという仕事である。東京都環境公社が都からの委託で隅田川など30河川で日曜日を除く毎日行っている仕事である。流れてくるごみのほとんどは、レジ袋やお菓子の個包装等の使い捨てプラスチックである。中には、不法投棄と思われる冷蔵庫や、カラスや猫、犬の死体である。コンクリートの堤防下のわずかな砂浜に降り立ったカラスや猫、犬が、船の波でさらわれて流され、直立のコンクリート堤防に阻(はば)まれ、溺死したものと思われる。洪水時には下水道管に住み着くネズミも大量に流れている。筆者が危惧しているのは、お菓子の個包装である。これらはプラスチックでできているから、拾われない限り、それこそ海の藻屑(もくず)となるものだが、藻屑ならば、自然界で微生物によって分解されるから問題はないが、プラスチックである個包装は厄介である。プラスチックは生物分解を受けず、いつまでも環境中に残り続ける。「プラには寿命がない」と専門家が言うのはこのためである。最近の深海を調査した潜水艦によると、「深海底3地点で、1平方キロの範囲を調べ、目に見える大きさのプラごみの個数を数えた。その平均個数は4561個で、8割以上が、ポリ袋や食品包装などの使い捨てプラごみだった。中には、レジ袋や、1984年製のプラスチックのハンバーグの袋もあったという。過去に深海底のプラごみを調べた国内外の研究では、平均100個に満たないといい、海洋機構の中嶋亮太・副主任研究員は、「房総半島沖の黒潮が渦を巻く場所の深海底は、プラごみの集積地になっていることがわかった」という(2021年4月1日朝日新聞)。1984年製のハンバーグの袋というと、今から37年前のハンバーグの袋である。何の破れ等も、生物による分解を受けることもなく、調査研究のため、ロボットアームで回収された。

 森などに不法投棄されたごみを拾うボランティアをしたことがある。確かに土の中にあるレジ袋等のプラスチックは破れ放題になっている。しかし、研究者によると、海で漂流しているプラごみも含めて、生物による分解を受けているのではなく、紫外線や波、水分等で小さく崩壊しているだけで、プラスチックの粒々は残ったままである。これが5mm以下のプラスチックならば、いわゆる、マイクロプラスチック問題である。NHKスペシャル「2030 未来への分岐点」の2021年2月28日(日)に放送された、「3.プラスチック汚染の脅威 大量消費社会の限界」を見たときは衝撃を受けた。マイクロプラスチックどころか、どんどん崩壊して、ナノプラスチックにまで小さくなり、血液中にまで入り込むまでになっている

 これらお菓子の個包装、中身を取ろうとして破り捨てたプラスチックの破片も含めて、太平洋に流れて行ったらどうなるか。クジラなどが食餌をとる様子を見ると、大きな口を開けて魚の卵や小魚を食べている。その中にレジ袋やプラスチックの個包装が入っていたら大変な迷惑であろう。事実、最近の報道では、「タイの海岸に流れ着いたクジラの胃の中には、なんと80枚を超えるプラスチック袋(レジ袋)が詰まっていた。」という。地球に住んでいるのは人間だけではないのだ。動植物に迷惑をかけていないか、同じ地球に住む生物としての気遣いを持つべきと考える。


なぜ個包装がはやるのか?

 メーカーに聞いたことがある。商品を陳列するときに、立てて陳列し、消費者が選びやすいように、見た目が良くなるようにするために、トレー(プラスチックのお皿)の上に、さらにお菓子の一つ一つをプラスチックで包装して陳列している。このようなことで、プラスチックの個包装のために、1割近く、商品の値段が高くなっているという。

メーカーに個包装を止めてもらうためにはどうしたら良いか?

 これは、消費者が、個包装のお菓子を買わないことである。観光地で買うときも、できるだけ、小分け包装のものを買うようにしたい。机の上に、個包装のお菓子よりも、小分け包装のお菓子をお土産として置いて行ってもらった方が、お土産としては豪華である。

 地面や海洋に散乱、漂流した個包装のプラスチックを拾うのは大変である。生物にも迷惑である。個包装を止めてプラスチックの使用を抑制するためには、個包装に税金をかけるしかないであろう。個包装一つ1円の環境税を提案したい。今回、調査のために購入した「田舎のおかき」は、外袋が6g、トレーが3g、個包装9枚合計5gであった。個包装を止めれば、お菓子に使われるプラスチックが約6割(8/14)も削減されるということを示している。使用済みのプラスチックを回収して焼却等をしている自治体も声を大にして個包装を止めるよう社会に働きかけて欲しい。ごみを処理するだけの役割では悲しいではないか。














お菓子箱を復権しよう!

 個包装を止めると、お菓子が湿気(しけ)てしまう恐れがある。そこで、筆者は、乾燥材シリカゲルを入れた木製のお菓子箱を提案したい。昔はどの家でもお菓子箱があったと思う。それを復権するのだ。メーカーの人がこの文章を読んでいたら、一緒にお菓子箱を作りましょう。知っている人は少ないかもしれないが、乾燥材シリカゲルは、水分を吸って湿気てしまった後も、フライパンで空焚きすれば、何度でも再生する。



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