藤井聡京都大学大学院教授の著作「公共事業が日本を救う」を読ませていただきました。あなたの主張を、一言で言えば、日本国土を、地震や津波や台風といった自然災害に強い強靭(きょうじん)な国を造ろうということですね。最近の政府が良く話題にあげる強靭化の言葉はあなたの主張を取り入れたものなのですね。でもあなたの主張の中で欠けている視点があります。それは、地球に、日本国土に住む生き物は人間だけではない。動植物も住んでいるということを、全く考慮に入れていないことです。地球温暖化やマイクロプラスチック問題は人間以外の動植物への配慮がありますが、強靭化理論には動植物への配慮がない。人間の都合だけを考えている。人間の生命、財産のことだけを考える理論である。人間の命は地球よりも重い。正にその通り。しかし、災害では、人間は逃げることができる。災害が起こらない所、川のそばや土砂災害が起こらない所に建物を建てなければ良い。家を建てさせなければ良い。しかし、あなたの主張をそのまま通せばどうなりますか。2011年(平成23年)3月11日の東日本大震災後、災害地の宮城県では、たった100年に一度の大津波に備えて、10mというビル2階建ての超巨大な防潮堤を造っている。そのようなことをすればどうなるか。まず美しい海岸線は失われる。釣りをしたり、貝を拾ったり、ぼんやりと海を眺めるという海の持つ癒しがすべて失われる。海と陸を行き来していた、卵を砂浜に産み付けようとしていたウミガメなどが寄り付けなくなる。たった100年に一度ですよ。その間の99年間は、高い防潮堤を眺めながら過ごしますか?もっと海から離れて家を建てればいいではありませんか。川のそばに、土砂災害が起こるような山のそばに建物を造らなければいいではありませんか。わざわざ災害が起こりそうな川のそばに老人ホームを造ったりしなければいいではありませんか。実際、平成 21 年 7 月の中国・九州北部豪雨では、山口県防府市を中心に多数の土石流が発生し、同市真尾(まなお)地区にある特別養護老人ホームでは、施設1階に流入した土石流により7 名が亡くなっている。防潮堤も、砂浜や岩場をすべて壊して造るのではなく、もっと海岸から離して造ったらいいではありませんか イタリアでは、1985年に制定された「ガラッソ 法」で、海岸の水辺から300m、湖岸・川岸から150mの部分では、詳細な環境・景観保全計画がない限り、一切の開発を禁止する。標高1,200m以上の山岳部の開発も一切禁止することが決められていると言う。下の写真を見ていただきたい。


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