<調査結果>
実際の調査では、4m四方で、ロープ枠を作って、その中のプラスチックを拾った。
江の島水族館前の湘南の砂浜で、近くのNGOの団体や自治会が絶えず清掃を行っているため、目立つ大きなごみはゼロであった。推測だが、表の中の小さなごみまでは拾えていないと思われる。
4m×4m×3面=48㎡の中の、5mm以下のマイクロプラスチックは丁度100個(写真は100個のマイクロプラスチックである)、5mmを超えるプラスチックは64個、合計164個であった。写真をご覧になった兼廣先生の解説によると、緑色のプラスチックは、人口芝であるという。
<砂浜の散乱調査結果で何が分かる?>
波打ち際から最大源波が届くまでの長さ37.5mの砂浜が、ずっと相模湾全長141kmに及び、さらには、日本の海岸がすべて同じ砂浜であると仮定すれば、日本の海岸総延長3万5千kmでは、3万5千km÷141km×約1,800万個(あるいは重量にして2,000kg)=約45億個、重量にして約500トンに達すると、推測できる。2018年の日本におけるプラスチック生産量は、1,067万トンであるから、1年間のプラスチック生産量の約0.005%が海洋を汚染したことになる。なお、プラスチックの中には、海底に沈んだものも大量にあり、すべてのプラスチックの動態を調べたわけではない。
高田秀重先生によると、「海洋での観測結果を基に作られたモデルからは,全海洋に浮遊するプラスチック量は 27 万 ton,5 兆個と推定された。ただし,この推定でのプラスチック量は 0.3 mm 以上のプラスチックの総量であり,最近の研究により 0.3 mm 以下の微細なマイクロプラスチックが多数存在することが明らかにされてきているので,この 5 兆個は過小評価である。一方陸域から海洋へ流入するプラスチック量は年間 480 万 〜1,270 万 ton (平均 800 万 ton) と推定され,流入量に比べて浮遊量が桁違いに少なく,海底への堆積が主要な貯蔵庫と考えられる。地中海の深海底に沈んでいるPET ボトルは有名な例である。」と紹介している(廃棄物資源循環学会誌誌Vol. 29,N o. 4,「マイクロプラスチック汚染の現状,国際動向および対策」。)。この研究から、陸域から海洋に流入するプラスチック量は平均800万トン。これに対し、全海洋に浮遊するプラスチック量は 27 万 tonと推定されるから、浮遊プラスチック量の約30倍が海底に沈んでいると推測される。この結果を利用すると、0.005%の30倍の0.15%、つまり日本では、約2万トンのプラスチックが海底に沈んでいることになる。とかなり大胆な予測ではあるが、砂浜4m四方のマイクロプラスチックの個数・量を調べただけでおおよその日本全体の海岸でのプラスチックの動態が予測できる。
この結果は、たまたまこの日、プラスチックが砂浜に滞留している数と重さはこれ位と予測できるだけであるが、これを1週間後、ごみを拾った同じ場所でまた拾って、1週間分のごみ量が計測できれば、1日間や1年間のプラスチックの散乱個数と重量を計測できることになる。年間のプラスチックの生産量が分かれば、生産量の何%が散乱されているかと予測できる。この結果を利用して、政府に生分解できない「プラスチック」を止めるようにと、政策提言できるし、民間会社にはできるだけプラスチックを使わないようにしましょうと、提案できることになる。
ただこのやり方では、純粋にそこにあるごみを取り除いて、新たに沖合からプラスチックが砂浜に打ちあがったかというと、そうとも言えない。調査場所の横から横滑りしただけかもしれない。純粋に1日分(あるいは1週間や1年分)のごみ量を推測するには、小さな入り江の砂浜を特定し、そこにあるごみをすべて取り除いた上で、1日間や1週間に貯まるごみ量を計測するか、一つの川を特定し、その川から海へ流れこむすべての浮遊ごみ量の1時間分のごみ量を測るといった手段であれば、1日間や1年間のプラスチックの散乱個数と重量を計測することは可能であろう。
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